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株式会社ハバリーズ代表取締役社長
矢野玲美

サスティナブルな紙パックウォーターをツールに、持続可能な社会を目指す。

「自治体や企業、ブランドを巻き込みながら社会を変えていく。私たちが目指す大きなゴールは、個人レベルで環境配慮の意識を変えていくことです。そのためにも社会にインパクトを与え続けられる存在でありたい」

サスティナブルな紙パックウォーターが未来を変える

「1本の水から世界が変わる」をコンセプトに、2020年夏に日本国内で初めて展開に成功した紙パックウォーター「ハバリーズ」。世界中で環境問題や持続可能な開発目標(SDGs)への関心が高まる今、大きな反響を呼んだ。この「ハバリーズ」を手がけたのは、若き起業家・矢野玲美さんだ。

当時、技術系の商社に勤めていた彼女は、日本と海外を仕事で行き来する中、日本に持ち運びできる紙パックの水が一つもないことに気づく。もともと大分県の羽馬礼(はばれい)という村を始め、九州に複数の水源を持つ飲料水メーカーがファミリービジネスだったこともあり、欧米ではすでに一般的だった紙パックウォーターに着目したのである。

「世の中がどんどん脱プラスチックに加速していく中、この紙パックウォーターがいずれ社会にいいインパクトをもたらすのではと思ったんです。それと事業承継のタイミングがクロスする形で商品開発に至りました」

しかし、実際に商品が出来上がるまではかなりの苦労を強いられたという。

「ハバリーズの包材は森林環境保全に配慮して作られた紙に与えられるFSC認証*を取得した100%再生可能な紙資源を使用していますが、そもそも国内に前例がなかったこともあって、この包材に辿り着くまでにかなり苦労しました。世界中の紙パックの水を買い集めたりして地道にトライ&エラーを繰り返しました」

*FSC認証とは…国際機関である森林管理協議会(FSC/Forest Stewardship Council)により、紙の原料となる木材が森林の環境保全に配慮し、地域社会の利益に叶い、経済的にも継続可能な形で生産されていることを検証する制度。

水源保全は自然環境を守り、豊かな生態系を育む

持ち前のポジティブ&ロジカルシンキングと徹底したリサーチ力を発揮し、ようやく見つけた包材は内側に専用フィルムを用いた特殊なアルミ付き紙パックだった。水の繊細な味や質を損なわず、美味しさをキープする、まさに彼女が思い描いた理想の包材だ。さらに、今年からボトルキャップをサトウキビ由来のものに切り替える取り組みも始まった。これらのこだわりは、彼女が水源所有者としての責任を強く感じているからにほかならない。

「今、日本では水源の枯渇問題や海外資本による水源の買収という大きな問題を抱えていて、本当の意味での水源保全について考えていく必要があります。だから、私は水源を保有する立場として、気候変動のみならず、国内の水の資源をどういう形で守っていくことが正しいのか、どうしたら一人ひとりの方へ効果的にメッセージが届けられるかを考えました。その最も適した方法がビジネスを通じて社会を巻き込むことだと思いました。だから、この紙パックウォーターはあくまでも環境配慮のためのツールなんです」

水の循環は自然環境を形成する要だ。これが滞れば、人間はもちろん、地球上の動植物の生態系のバランスも大きく崩れてしまう。

「その根底にあるのが水源なんです。脱プラスチックも大事ですが、それは部分的なこと。そもそものルーツとなる水源保全がとても重要だと思っています」

「ハバリーズを手にすることで、地球環境や水源保全について考えるきっかけになってほしい。この先は、地球環境を守るため、一人ひとりが具体的な行動に移るフェーズに来ていると思う」

地球環境・水質保全について考えるきっかけに

この「ハバリーズ」の理念に共感したポルシェジャパンでは、今後、全国のディーラー各店舗を始め、本社やポルシェ・エクスペリエンスセンターで「ハバリーズ」とコラボした紙パックウォーターを提供していく。

「環境配慮のためのメッセージを発信していくのが、私たちの役目。だから、キャッチコピーも『1本の水から世界が変わる』なんです。でも、私たちができることやメッセージを届けられる範囲は限定的だし、時間もかかります。だから、自治体や企業、ブランドを巻き込みながら、社会にメッセージを発信していきたい。今回のポルシェジャパンとのパートナーシップは社会に与えるインパクトも大きいですし、とても期待しています」

SDGsによって高まるサスティナビリティへの意識。自治体や企業の取り組みは加速しているものの、個人レベルではまだ広く深く浸透しているとはいい難いのも現実だ。

「水はTPOに関係なく、あらゆるシチュエーションで誰でもアクセスできるのが強み。ポルシェジャパンを訪れたお客様がハバリーズを手にすることで、気候変動への負荷やリサイクルについて考えるきっかけになってくれればいいなと思います。今、社会的にもいい流れは来ていると思うので、これから先は一人ひとりが地球環境を守るために具体的な行動に移るフェーズなんだと思います」

「ハバリーズ」を購入すると1商品につき1円が環境保全に寄付される。また飲み終えた後は送料無料でリサイクル回収をするなど、誰もが気軽にSDGsに取り組める道標は整っている。

「ハバリーズの認知度を広げつつ、個人レベルで環境配慮の意識を変えて行動に移してもらうことが、私たちが目指すべき大きなゴールです。そのためにも社会にインパクトを与え続けられる存在でありたい。それが今の私の夢です」