「情報が飽和状態ともいえるこの時代に、僕らHYPEBEASTは良きキュレーターとして、より確かなものを紹介していきたい。HYPEBEASTのコアユーザーはこれからいろいろなことを変えていける人たちだから、彼らの役に立てたらいいなと思う」
「HYPEBEAST」は、ファッションやストリートカルチャーを中心に、ライフスタイルからアート、デザイン、ミュージックといった幅広いジャンルの”今”を切り取る、香港発のグローバルデジタルメディアだ。現在はアジア、北米、ヨーロッパの若者層に支持される一大メディアへと成長と遂げている。
その日本法人として2019年に設立された「HYPEBEAST JAPAN」は、日本独特のストリートカルチャーはもちろん、日本ならではのユニークなトピックやアイテムを海外へ発信するプラットフォーム的な役割も担う。この「HYPEBEAST JAPAN」の要といえるのが、編集長の阿部勇紀さんである。
2018年に法人化前の「HYPEBEAST JAPAN」に加入すると、彼は持ち前のセンスと行動力、そしてコミュニケーション力で、瞬く間に同社に欠かせない存在となった。そんな彼のバケットリストを尋ねてみると「僕のバケットリストはまあまあ叶っているかなと思う」と話す。
「たとえば、音楽をやっていた時代は昔から憧れていたアーティストと一緒に曲を作ったり、アメリカツアーに行ったり、海外のフェスに出たり。HYPEBEASTの仕事もそうなのですが、その瞬間は夢中であまり感じないけど、ほかの人が同じことをしていたら『おっ、すごいな』って思うようなことをやってきているのかなとは思います」
彼の経歴はかなり異色だ。ミュージシャンとして活動していた時期もあったが、それだけでは生活がままならず、サラリーマンとしてIT企業や人材派遣会社などを転々したことも。その一方で、NBAの公式サイトにコラムを執筆するなど、多才な一面も覗かせていた。「HYPEBEAST JAPAN」の入社のきっかけもその流れだったそうで、当初は外部ライターの1人として携わっていたという。
「自分でも不思議な人生だと思いますね。今はメディアとしてHYPEBEASTの成長を促すためのハンドリングがメインの仕事になっていますが、ほかにもYouTubeの撮影をしたり。いろいろな仕事をしているので、自分でも何屋かわからなくなりました(笑)」
2020年に編集長に就任すると、より一層、今後のメディアの価値やあり方を考えずにはいられないと話す。
「今はSNSで何でも情報が手に入る時代です。でも、誰ものが情報を発信しやすくなった分、情報がありすぎて飽和状態ともいえます。そんな中で僕らHYPEBEASTは、良きキュレーターとして読者の皆さんにより確かなものを紹介していけたらいいなと思う。あとは、日本のファッションブランドでも職人気質の方はたくさんいて、少し不器用というか、プロモーション的なことが不得意な方たちを、僕らがサポートできればいいなと思うんです。そういう方たちと情報を受け取る側のコミュニティがうまく作れれば、お互いにとってウィンウィンだし、もっと面白いシーンが出てくるのかなって」
コロナ禍で気軽に海外に行けなくなった今、改めて日本の良さを感じた人も多くいるはずだ。彼はそんな日本の素晴らしい技術やプロダクトを「HYPEBEAST」というプラットフォームを使って世界中の人たちにリーチしていきたいという。
「HYPEBEASTのコアユーザーは18歳~44歳くらい。まさにこれからいろいろなことを変えていける人たちなんです。だから、僕らが彼らに影響を与えるというとおこがましいけど、何かしら役に立てたらいいなと思っています」
「今もずっと走り続けている状態だから、時々、自分のやってきたことを振り返り、その時の達成感を自分の中に落とし込む。そうして自分の中に少し栄養を与えてあげないとしんどくなってしまう。前を見続けることも大事だけど、時には振り返ることも大切だと思う」
彼の仕事や趣味に対する姿勢は常にアグレッシブだ。でも、時にはしんどくなったり、疲れてしまうこともあるのではないだろうか。
「今もずっと走り続けている状態なので、そんな時は自分がやってきたことを振り返るようにしています。自分で自分を客観的に評価するのはなかなか難しいから、その時々の達成感を自分の中にちゃんと落とし込む。そうして自分の中に少し“栄養”を与えてあげるんです。ずっと前を見続けることも大事だとは思うけど、時には振り返ることも大切だなと思っています」
この日に行われた『Bucket List-Driven by Dreams』の収録は、2022年4月1日にオープンした日本初の都市型コンセプトストア「ポルシェスタジオ日本橋」で行われた。
「最後に運転したのは記憶にないくらい前」だと話す彼は、展示中のタイカンの電気自動車と911のカレラSに乗り込んでエンジンをかけてみる。
「感想がぱっと浮かばないくらい、圧倒されますね。やばいですね。僕はずっと東京だったので、そこまでクルマの必要性を感じていなかったけど、実際に乗ってエンジンをかけるとやっぱり欲しいなって思います。うん、Porscheに乗りたい。今、めちゃくちゃ物欲がわきました。今日、夢が一つできましたね(笑)」