「波に乗る」とひと口にいっても、そのスタイルは多岐に渡る。阿出川潤はサーフィンのみならず、カイトサーフィン、スタンドアップパドルサーフィン(SUP)、フォイルサーフィン、ウインドサーフィンなど、海を舞台とする数々のアクションスポーツに精通するオールラウンダーだ。スウェルの規模、波のサイズ、風、潮の干満、海底の地形。自然がもたらすさまざまな条件が絡み合い、刻一刻と変化する海原と相談しながら、阿出川はその時もっともベストな方法で波と共鳴し、風をとらえる。サーフィンに不向きなコンディションも、カイトサーフィンならば理想のコンディションになり得る。逆もまた然り。退屈とは無縁だ。
「僕は本来とても不器用な人間です。でも、新しい扉をひとつひとつ開いていくうちに、気づいたんです。道具や乗り方が変わっても“波に乗る”という本質は変わらない。自分で壁をつくる必要はないって」
阿出川潤。常にチャレンジを忘れず、殻を破り続けてきたアンストッパブルな生き様はいかにして導かれたのか。約束の日、奇しくもホームである千葉・九十九里を大型のスウェルがかすめた。阿出川は波と共に生きている。自然と人、どちらに合わせるべきかは明白だ。私たちは時間を変更し、阿出川は波を求めて南房総へ向かった。そしてハードなラウンドを終えた夜、家路に着いた阿出川は穏やかな表情を称え、席についてくれた。